2020年9月号(1)大規模改修と税金の関係??

●大規模改修と税金の関係??

今回は大規模改修と税金をテーマにお話を進めようと思います。
大規模改修というと建物で言えば外壁塗装や屋上防水、
室内ではリノベーションなどが挙げられます。このように聞くと
「たくさんお金がかかるんだろうな~」と不安になり、
今は止めておきたいと考えるかもしれません。ただし、月日が経つにつれ、
当然建物は古くなり傷みを生じますし、部屋の間取りや設備、
仕様は陳腐化していきます。建物を所有している以上、
いずれはこの問題にぶつかることになります。先々どうせかかる費用ならば、
空室問題が起こってからではなく、事前に計画的に行いたいものです。
そこでお伝えするのが今回のテーマです。大規模改修を検討するのに、是非参考にされてください。

まず節税するには、矛盾するようですがやはりお金を使わなければならないということです。
しかし単純にいうと生きた価値ある経費をいかに計画的に使うかということです。
右上部の表を御覧いただきたいのですが、経年と共に納税額は増えていきます。
決算書上で見ていきますと、家賃収入から経費を差し引いて、残った利益に対して納税額が決まります。
経費として認められるものは、固定資産税や借入利息、減価償却費、そして表で示すその他は、
退去時の原状回復費や管理手数料、AD(広告料)などが挙げられます。
ただこれら経費が経年と共に確実に減ります。それは、借入利息は借入当初よりも年々減っていますし、
減価償却費も耐用年数に応じて減少、また均等償却であっても耐用年数までしか経費計上出来ません。
経費として認められながらも、実際にはキャッシュが残る有難いこの減価償却費が減少する事により、
その分増えた利益に対する課税アップで、手元に残るキャッシュも確実に減り、
キャッシュフローは悪化します。そこで、どうせ経費を使うのであれば、
建物や部屋の改善を行い、将来に向けて競争力高い物件にすることで、収益最大化、
収益改善を図り、行く末は良い状態で後継者に受け継いでもらうことこそ大切になります。

それではどういう増やし方をすればいいのでしょうか。経費のかけ方は様々です。
ではまず、ここでの経費の性格について見てみたいと思います。経費は大きく2つに分けられます。
それは「修繕費(収益的支出)」「減価償却費(資本的支出)」です。
前者は、物件の通常の維持管理又は原状回復のための支出をいい、
単年度の期間費用として一括処理されます。
一方後者は、物件の修理、改良等のために支出した金額のうち、使用可能期間を延長または
価値を増加させる部分をいい、取得原価に含まれてしまいます。
よって経費計上する時も、減価償却費として耐用年数に応じて計上される訳です。
ここでポイントになるのは、節税効果を上げるためには、
耐用年数に応じた経費として複数年で計上する減価償却費よりも
一括で計上できる修繕費をいかに多くするかにあります。修繕費と資本的支出の判別フローチャートは
下図に示すとおりです。具体的には、外壁塗装は修繕費にあたりますが、
それに合わせてエントランスの床を大理石に変えたら、その部分については、価値が上がったとみなされ、
資本的支出になります。また室内改装についても、流し台をシステムキッチンに変える、
和室を洋室に変更し、押入れをクローゼットに変える、キッチンと隣接部屋をくっつけてLDKにする等は
価値が上がったとみなされ資本的支出になります。一方、同等の流し台に変える、クロスやCF、
襖の張替え、畳の表替え等は修繕費になります。このように内容によって修繕費か資本的支出かが決まります。
よって不謹慎ながら、資本的支出をいかにして修繕費で落とせるかという視点も、節税対策には必要だと思います(笑)。

もちろん、減価償却費に該当する工事であっても、改善された家賃収入と増加した減価償却費により、
ローン利用とその支払いが可能ならば、追加融資も要検討ですね。
その利息は経費計上できる上、返済期間をその耐用年数内に設定できれば、
施工時一括払いの負担もなく節税効果もあるからです。