2015年3月号(1)国家戦略特区が空室対策になる?

matsuo 立春を過ぎたと言うものの、まだまだ寒さが身に染みる季節です。オーナー様のお子さんやお孫さんの中には入試のラストスパートをかけている方もおられることと思います。我々も不動産業界の繁忙期真っ只中です。ここで何とか入居を決めよう!と日々接客・案内にいそしんでおります。繁忙期が過ぎた後に「今年は忙しかった、でもそれだけ入居が決まった」と言いたいものです。(松尾)

 

 

国家戦略特区が空室対策になる?

今回は福岡市が「国家戦略特区」(以下特区とします)に指定されたことでどういう影響があるかを考えていきます。特区とはアベノミクスの成長戦略の柱の一つで、要は規制緩和や税制優遇の特例のことです。

総理大臣主導で政令を定め、指定された地方公共団体が具体的な条例を定めます。では、その中でどの部分が賃貸物件を持っているオーナーの皆様に係ってくるのか?「宿泊」という側面から賃貸物件の可能性を見ていきます。

 

 

現状の短期宿泊事情

現在1か月以上の宿泊の場合(1年に満たない賃貸借契約、マンスリー等)は通常、定期借家契約をしていますが、1ヶ月に満たない宿泊の場合は基本的に旅館業法の営業許可が必要です。

1泊や2泊あるいは1週間の場合、ホテルや旅館、ウィークリーマンションに泊まります。これらの不特定多数の人が頻繁に入れ替わる施設は旅館業法、消防法等で厳しい規制を受けています。

したがって既存のアパートやマンションの空室を短期貸しようとすると新たに高額な設備投資しなければなりません。最近話題の「Airbnb」(エアビーアンドビー)は旅行者と目的地の空家や空部屋を持つオーナーとをネット上で結びつける場を提供しています。

欧米のバックパッカーを中心に利用が活発となり日本でも自宅やマンションの空き部屋を登録してお客さんを取っているオーナーが増えているようです。しかし、上記理由によりこれが旅館業法に抵触している可能性があるのです。

 

厚生労働省通達の旅館業に該当するかの判断要素を見ると以下の2点になります。

①室内の管理は誰がするのか。

②施設利用者が当該部屋に生活の本拠を置いているか。

①について、賃貸ではオーナーといえども勝手に部屋には入れません。つまり室内管理は利用者になります。逆にホテルや旅館では従業員が勝手に入って清掃や寝具準備をします。

②については賃貸なら住民票を移したり郵便を受け取ったりしますが、旅行や出張でそこまではしません。ケースバイケースで実際の利用形態や期間を考慮して旅館業法に抵触するかを判断しているようです。特区ではこの旅館業法の適用除外が検討されています。

 

 

特区における旅館業法の特例

年々増加する外国人旅行者(2014年は過去最高の1,341万人)特に2020年の東京オリンピックの際には多数の外国人が日本に集まることが予想されます。政府の見解ではその際に200万人泊くらい宿泊施設が不足するとのことです。

そこで宿泊先の確保と現在社会問題となっている空室や空家をマッチングさせることで両方を解決できるアイディアが注目されています。検討案として特区に指定されたところは10日以上の宿泊なら旅館業法の適用除外になるというものです。

しかも元は外国人に対しての措置であるにもかかわらず日本人を泊めてもOKなのです。つまり10日以上なら誰を入れてもいいということです。もちろん旅館業界との調整が必要ですが、規制緩和により空室対策の選択肢が増える可能性があります。(残念ながら福岡市だけですが(>_<))

 

(下は旅館業法適用除外の概要)

20150228 旅館業法の特例