2015年5月号(2)☆☆価値を高める「住宅情報履歴」!?☆☆

今回は以前にも触れたことがありますが、中古住宅の取引について、欧米との比較や今後の方向性を考えていきます。まず、日本と欧米では住宅に対する考え方が全く異なっています。日本では「所有する」という意識で基本的に‘終の棲家’という感覚です。

一方、欧米では「投資」という意識で、住み替えを前提にメンテナンスし、将来高く売って買い替えるという感覚。これが中古住宅の価値感・評価の差に繋がっています。つまり、日本と欧米では、建物を評価する‘物差し’自体が違うのです。

中古住宅の評価、日本と欧米の比較

また欧米では新築よりも中古の方がリスクが少ないと考えられています。新しい開発地の新築だと建物の不具合の有無や周囲にどんな住民が住むかもわからない、不確定要素が大きいからです。逆に中古住宅は周辺環境も安定していますし、メンテナンスさえ行えば将来高く売れるという考えです。

例えば大規模なリフォームを行えば建物の価値も比例して上がります。結果として、リフォームやメンテナンスで投資した額より評価が上回ることさえあります。このような評価・価値観が一般に浸透している為、築年数が経っても多くの建物が評価されるのです。実際に築年数50年超でも評価されています。では日本ではどうでしょう?

確かに戦後や高度成長期に建てられた住宅は性能が低いものが多く、確かに20年程度で無価値となっていました。でも現在では、建物の耐久性や質はかなり向上しています。それでも依然として築年数20年経過で無価値になっているのです。

この原因の最たるものはそ、財務省により木造住宅の耐用年数が22年と定められていること。でも、これは本来会計上の償却年数の話で、当然ながら使用限界年数ではありません。

ということは、日本の住宅もメンテナンスすれば、ずっと長く使えるということなのです。しかしリフォームやメンテナンスをしても「無価値」という評価が、これまでの中古住宅流通のネックだったのです。

 

中古住宅の価値を高めるために

では本当にリフォームやメンテナンスをしっかりするだけで、中古住宅が評価されるのか? 答えはそれだけではまだ不十分!これを満点解答とするには「住宅情報履歴」を作成しておくこと。

日本で買主が中古住宅の購入に不安を持つのは「違法建築ではないか?」 「購入後にリフォーム費用が必要に?」「隠れた不具合がないか?」等が挙げられます。

でも、これらは記録を残せばほぼ解消される不安です。具体的には、新築時の確認申請資料から、その後、いつどんな工事を行ったか、請求書や工事写真等をファイルしておくのです。外壁塗装、流し台交換、シロアリ防除、給湯器交換など、細かいリフォームの状況もです。

そうすることで将来の売主にとっては、お金の掛け損にならず、買主にとっても建物の状態がよく分かり、双方が安心して取引が出来るのです。その元となる情報が不足しているならば意味がありません。

今後は建物についてのあらゆる情報を自らストックしておく必要があります。

ストック活用社会が近年の空家問題やアベノミクスとも相まって、中古住宅流通の活性化に向け動き出しています。

(下図は今後の中古住宅流通のイメージ)

 

screenshot.2

(住宅市場活性化が目指す住宅市場の将来像)

 

ご存知ですか?「インスペクション」という言葉。売却中の中古住宅に安心感を持たせようと、まずは何より建物の検査を!という趣旨ですが、今その費用負担を国や県が補助する等して、本気で中古住宅の市場転換を図ろうとしているのです。

だから、備えあれば…!!