2015年8月号(2)パーソナルブランディング!「やり方」から「あり方」へ

6月20日~26日の6日間、車掌の青山と私田所の2名は宅建協会視察団(総勢約25名)の一員として米国シアトルに行ってきました!今回はその報告と、現地で得た情報から、私なりの視点で今後の日本を予測してみたいと思います。

何をたいそうなことを、と思われるかもしれませんが(笑)。どうぞお付き合いください。

 

【経済成長著しい都市シアトル】

私にとって一番親しみのあるシアトルといえば、野球のイチロー選手がいたシアトルマリナーズです。ほとんどの日本人がそうでしょう。

実はこのシアトル、スタバ・コストコ・Adobe・Microsoft・Amazonなどの世界企業が本社を構え、不動産価格が1年で14%上昇、人口が1年で5000人も増えるエリアもあるという、アメリカでも有数の成長都市なのです。

 

私は知りませんでしたが、実は約100年前には日本人の移民も多くいたそうで、カフェラテでおなじみのあの山にも、富士の名が付けられていました。

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【写真:タコマ富士(マウントレーニア)】

 

 

【視察団の目的】

さて、アメリカの不動産事情は日本の10年は先を行っていると言われます。何がそんなに違うのか?シアトルでの学びを簡単にご紹介します。まずは何と言っても不動産の価値に関する考え方の違い。

前回もご紹介しましたが、アメリカでは住宅の減価償却期間が日本の住宅の倍以上あり、価値の下がり方が違います。また、途中でリフォームをすれば建物自体の価値を維持または上昇させることも可能であるため、30年経てば価値なし(最悪の場合は解体費用分さらにマイナス)という日本の住宅評価とは異なります。

さらに、市民のほとんどが「移民」というルーツの違いもあるのでしょうか、「先祖代々の土地」を永く所有するという感覚はありません。その時々のライフスタイルに合わせて住み替えるという文化です(平均7.5年に1回買い換え)。住宅は一度買って終わりではなく、数年後には売却する買換え資産という考え方なので日頃からメンテナンスを怠らないわけです。

写真は築80年の中古住宅。地価が上がっていることもありますが、きちんとメンテナンスされているため、 新築と変わらない価格で売り出し中でした。現在日本が国の戦略として力を入れている「中古住宅の流通促進」はこういったアメリカ的発想が基になっています。

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【日本=不動産業者、アメリカ=エージェント】

日本とアメリカの「不動産屋さん」は全く別物です。日本が住宅を探すために不動産会社に行くに対し、アメリカではブローカーやエージェントと呼ばれる担当者個人を頼ります。

確かに最近では、囲い込みや脱税など大手企業の不正も頻繁に見かけますし、信じられるのは結局どんな担当者なのか?という個人指向なのではないでしょうか。

情報もその企業が発する一方的な宣伝よりもレビューや口コミなどを信用しますよね。情報社会の行き着くところは結局、アナログ的デジタルというもの?だと感じました。

また、売買のシステムも違います。日本では不動産業者が最初から最後まで携わるのに対し、アメリカではエージェントがコーディネートした、もしくは買い手が自分で選んだ専門家が分業して行います(右図1参照)。

基本的にその専門家は自分の領域の仕事しかしません。もし間違った情報を与えてしまうと買い手から訴えられる可能性があるからです。買い手は集まったそれらの情報を基に「自己責任」で購入を決断するのです。訴訟社会ならではの考え方だと感じました。

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【図1:不動産取引のフロー】エージェントは売主と買主を引き合わせ、物件調査はインスペクター。住宅ローンはモゲージブローカーが担当します。そして契約・決済はエスクロー。登記はタイトルカンパニーというように完全に領域が分かれています。日本の不動産業者はこの全てにアドバイスやサポートをします。

 

 

【情報のインフラ化】

アメリカには各地域にMLS(マルチプルリスティングサービス)という不動産情報を掲載する情報機関があります。そこには、今現在売り出されている「全ての物件情報」があり、その情報は「全ての人およびウェブサイト」に公開されています。

実は日本にも同じ「レインズ」という情報機関はあるのですが、まだ一般には公開されていません。ただ、今のアメリカを見る限りもうじき日本でもオープンになっていくでしょう。

 

【“価値ある情報”とは?】

このように、不動産業者と一般消費者の持っている情報に差がないアメリカでは、不動産そのものの情報に価値はなく、情報を持っているだけでは勝負できないのです。

 

agent2zillow3↑MLSの情報が見れるサイト「Zillow」

 

だとしたらいったい何で勝負するのか?そこにエージェント個人の魅力が必要になっているのです。

どういった顧客サービスが提供できるのか、また私はどんな人間なのか、何を大切にしているのか、さらには家族構成や休みの日の過ごし方などその人を判断できるプライベートなものまでが、実は消費者が知りたい重要な情報かもしれません。

自分の魅力を伝える方法として、右の画像を見ても分かるように、アメリカのウェブサイトは今や不動産の情報を売るのではなく、エージェントを売るための大切なツールにもなっているのです。

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↑物件情報の横や上に出てくるエージェントの広告。Youtubeを使ったPRまで。 選んでもらうための工夫です。

 

不動産業界に限らず考えると、今はまだ知識やスキル等の「やり方」の方が注目されているかもしれませんが、情報に価値が無くなりつつ昨今、今後はやり方だけでは通用しない「あり方」を表現することが大切になりそうです。