2016年5月号(2)いよいよ解禁!民泊の「今」とこれからの課題

【脚光を浴びる民泊】

この満室委員会でも何度かトピックスを取り上げたことのある「民泊」。

自宅やマンションなどの空き部屋を宿泊施設として利用することです。近年、訪日外国人客の急増による宿泊施設不足への切り札として、新聞やインターネットなどのメディアでも盛んに取り上げられていますね。実際に世間の注目度は高く、民泊仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」への登録物件数は2016年1月1日現在で26,000件と前年同時期に比べて約4倍、利用者数は同5倍です。

提供者は空家を有効活用でき、もし自宅を提供するのであれば世界中からの旅行者と交流できます。また新たなビジネスチャンスとして大きな期待がかかります。利用者も宿泊費を安く抑えられるだけでなく、旅行先の日常生活や文化を肌で感じられます。こういう既存の宿泊施設では味わえない楽しさに人気が集まっています。

ところが実はつい最近まで、民泊は法的に曖昧なまま利用が先行している状況でした。無許可で観光客等を宿泊させて、旅館業法違反の容疑で書類送検されたり逮捕されたりしたケースもあります。さらに環境保全などを理由に民泊を許可しないことを表明する自治体や管理組合も出始めています。

このようにいまだ評価の分かれる民泊について、これからの課題も踏まえ、ここでもう一度現在までの経緯をおさらいしておきましょう。

 

【旅館業法の許可】

旅館業法では、①施設を設け②宿泊料を頂き③人を宿泊させる営業をする

ときは、都道府県知事あるいは市区長の許可を受けなければならないと定めています。有料で反復継続したビジネスをするなら許可が必要になるということです。まさに民泊のことですね。

そしてこの宿泊施設を運営する場合、旅館業法上、ホテル/旅館/簡易宿所のいずれかのカテゴリーで許可を受けなければなりません。カテゴリーごとに客室数、客室面積、フロント設備など許可基準が定められます。民泊を始めようとすれば、部屋数を問われず、フロント設備も必須ではない「簡易宿所」が最も許可を受けやすいことになります。ところが「簡易宿所」として許可を得るには、床面積が33㎡以上必要で、これが許可の大きなハードルになっていました。

またそもそも旅館業法に位置付けられると、住居専用地域での営業はできない、厳しい耐火基準、避難経路の確保といった建築基準法や消防法による一般の住宅とは異なる規制が課せられます。これらの要件をクリアできる物件は現実的には少なく、その結果、無許可営業の民泊が広まってきたのです。

 

【国家戦略特区】

実は従来から一定の民泊を認めるための特例ルールが設けられてきました。

類型ごとに分けると、面白そうな「農家民泊」や「古民家民泊」というものもありますが、ここでは「特区民泊」について。特区民泊とは、2013年の国家戦略特区法制定と同時に設けられた特例ルール。全国で10ヶ所に限られている国家戦略特区(福岡市と北九州市も該当)内であれば、滞在7日以上という要件はありますが、旅行業法の適用を受けずに民泊が可能なんです。

全国で初めて民泊を認める条例が制定されたのは、大阪府で2015年10月。次いで東京都大田区が同年12月。そして大田区は翌年の1月から事業者の募集を開始。

ただ高い関心を集めてるものの、滞在7日以上という要件がネックとなり、3月18日現在、実際に認定を受けた物件はわずか4件。特区民泊が一気に拡大しそうな状況には至ってないようです。

 

【国の対応~民泊拡大へ】

このような状況の中、ついに政府は民泊を全国で段階的に解禁する方針を固めました。第一段階として、2016年4月1日、厚生労働省は政省令を改正。民泊を旅館業法の「簡易宿所」に位置づけ、自治体が営業を許可することとしました。

ネックとなっていた33㎡の面積要件は「宿泊者が10人未満の場合は、一人あたり3.3㎡」という要件に緩和。そして宿泊者が10人未満であれば本人確認や緊急時の体制が整備されている場合、フロント設置は不要としました。

そして次なる第2段階では、管理業者の登録制度を導入し、ゴミや騒音等による近隣トラブルへの対応を義務付けるなど一定の規制をかけるとともに、住宅地での営業や1泊2日の宿泊を認める法整備を検討し、2017年の通常国会への法案提出を目指します。

宿泊施設の需要拡大に合わせて、これからも法整備は進んでいくでしょう。オーナー様の空室対策としても非常に期待できる制度です。今後の法改正や民泊を巡る動きを私達も注意深く見守り、随時お知らせしていきます。

そして当社社員が実際に(現在は違法?)民泊を体験、各物件の取り組みやサービスについて、感想も率直にお伝えします。

乞うご期待!!

直な思いをお伝えしていきたいと考えてます。