2016年9月号(2) 生活困窮者自立支援制度~満室を目指して~

知ってれば満室可能性を取りこぼさない!

 

その退去予告、ちょっと待った!

今回は公的な援助について、賃貸と関わりがあるものを見ていきます。

「生活保護の方で、申込みが入りました!」

と聞いたときに「ん?生活保護?家賃の支払いとか大丈夫かな?」と思ってしまう方がおられるかもしれません。

確かに以前はそんな心配もありましたが、現在はそうでもないのです。

何故かというと「代理納付制度」というものがあるからです!

その制度を利用すると家賃は自治体から直接指定先に振り込まれます。利用開始も書類に印鑑と振込先口座を指定するだけで簡単です。

つまり!家賃に関しては、普通の入居者よりも安心確実?と言えるかもしれません。もちろん、家賃の上限金額も決まっているので、すべての物件で使える訳ではありませんが、受給者にとっても生活の計画を無理なく立てることができます。

 

当然、受給要件がいくつかあります。

  1. 預貯金・財産等の資産がない。
  2. 援助してくれる身内がいない。
  3. 病気やケガ等でやむなく働けない。
  4. ①~③のすべてを満たしている状態で、月の収入が厚労省が定めた最低生活費を下回っている。

この要件を満たしていなければ生活保護の受給ができません。

 

次に、生活保護を受給する段階の手前で、何等かの補助を行い、困窮者の生活を立て直す「生活困窮者自立支援制度」を紹介します。

普段生活をしていて急な病気にかかってしまった。

勤め先が倒産してしまった。

それが原因で、家賃の支払いが厳しくなってしまった。

しかし、生活保護の受給要件を満たしていない。

そのような人を支援する為の制度です。

具体的には、最大9か月分の家賃を補助する他に就労訓練の実施や宿泊所・衣食住の提供、家計管理指導や貸付のあっせん等の支援を行います。

それらの受給要件として困窮者の求職活動や市役所との面談が必要となります。

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生活の立て直しを図る!

生活困窮者自立支援制度の中でも、特に不動産賃貸業に関わりのある「住宅確保給付金(家賃支給)」について更に詳しく説明させていただきます。

この制度の支給対象者は、先述の通り離職等により住居を失った方、または失う恐れの高い方、更に離職後2年以内かつ65歳未満であることが必要です。

支給期間は原則3ヶ月で、就職活動を誠実に行っていると認められた場合は最長9か月まで延長が可能です。要件を満たした方へ就職に向けた活動をする等を条件として一定期間、家賃相当額を支給します。生活の土台となる住居を維持したままで就業に向けた支援を行います。その結果、生活保護に至らず、家賃の延滞もなくなった、という事も実際に起こっています。

しかしこの制度の課題は、この制度自体の認知度が低い事です。昨年度の生活困窮者への支援状況として、福岡市でも新規相談受付件数1,486件に対し、住宅確保給付金の利用件数は186件とかなり少ない状況です。家賃支給までのハードルはそんなに高くないのに、制度の利用件数が伸びないのは困窮者自身がこんな情報を知らないからだと思います。

手前味噌で恐縮ですが、弊社管理部では、ここ2年間で10件ほど家賃滞納者と自治体へ同行し家賃補助を受給してもらっています。(筑紫野市・太宰府市・大野城市・春日市で。)

この方々は、やはり離職や病気からの生活資金不足から家賃滞納に至ってしまったケースがほとんどでした。そして、解約予告を書きに来て、延滞賃料の入金方法で相談にのり、その入居者の状態を初めて知る。

「このケースならOKだ!」と、それで手続きを行い解約を踏み止まらせ、今では優良入居者に。

このように、意欲があるのに様々な理由で働けない状況になってしまった入居者の方へ、この制度がある事を伝え活用することも満室経営を目指す私達の使命だと考えます。

また、生活困窮者の早期支援を図ることで、家賃滞納者に生活を安定させ家主様への収入安定を両立する。この循環で我々管理会社が地域にも貢献する事ができます。これこそまさに、三方良し!と自負しています!これからも様々な行政情報を注視し、活用していきます。