2017年5月号(2) 気になる「法人化」、得られるメリットと注意点

「今は法人に利益を残します。所得税ではなく法人税で払うのがお得だからです。法人設立し高収益物件を法人化しましょう。」

こんな見出しを先日目にしました。国内では、国家間での競争力を高めるため(国外への企業流出を食い止めるため)法人税率が引き下げ傾向にあるのに対し、海外へ逃亡できない(笑)個人への増税が行われている状況です。この見出しはそんな国内の現状を表した記事でした。

今回は、こういった市況を踏まえ、一度は気になったことがあるであろう「法人化」についてご紹介したいと思います。

法人化とは

読んで字のごとく、不動産を所有するオーナーが「個人」から「法人」になることをいいます。簡単にいうと、自ら会社を設立し、その会社に建物や土地を売却することで「法人化」の成立です。(個人に譲渡税がかかる点が注意ですが、3年以内に相続税を払った土地なら無税で移転ができる可能性も。)

それでは法人化で得られるメリットにはどのようなものがあるのでしょう。

1.個人と法人の税率差で節税

法人化のもたらす一番のメリットは節税です。その理由に、個人と法人での実行税率の違いがあります。個人に発生する所得税は所得が大きくなるほど税率が高くなります(最高55%)。

一方で、法人に適用される税率はわずか約30%。しかも法人所得800万円以下ならさらに低く20%台と個人の場合よりも低く設定されています。この差を利用し、最終的な納税額を減らすことが可能になります。

2、給与所得控除が受けられます                      

続いて給与所得控除です。給与所得控除とは、給与の金額に応じて一定の方法により計算され控除されるもので、法人化すると社長として法人から給与を受け取ることになるためこの控除が受けられます。では、法人化前後でどのように変わるか

【売上げ1,500万円、経費500万円、個人事業主としては65万円の青色申告特別控除を受けていた。法人化後は社長に1,000万円の給与を支払う。】

この仮定で法人化前後の比較をしてみましょう。

試算1

左記のとおり、法人化することで約80万円の節税が可能です。この例では社長に対する給与が法人の経費として計上され、さらに社長の給与所得に対しての給与所得控除(220万円)、そして控除後の所得にしか課税がされなかったことが節税に繋がったこと分かります。

この給与所得控除が受けられるようになることが、法人化による税務上のメリットとしてもっとも重要なものといっていいでしょう。

試算2

さらに、法人からの給与の支払先に配偶者などの親族を加えることができます。先ほどの例で給与だけを変更し、社長に760万円、配偶者に240万円支払うものとして算定するとさらに節税効果が得られます。

(個人事業主の時の税金259万円と比較して約118万円の節税)↑

3、相続対策にもなります  

これは、不動産を多く保有し、ある程度の規模で不動産賃貸を営んでいる方が当てはまると思います。なぜなら個人事業のままだと所得が事業主に集中しがちになるからです。所得が集中するということは、将来に向かって相続税の課税財産がどんどん増加することになりますから。

法人化すれば、会社に所得を分散することができるようになり、財産の蓄積を抑えることができます。例えば子どもや孫に給与を支払うことで所得の分散効果はさらに高くなり、子や孫はその給与を相続税の納税資金用にプールすることもできます。さらに法人所有になった不動産には相続が発生することがありませんので、今後の不動産の分散を防ぐこともできます。

法人化の注意点        

以上メリットをお伝えしましたが、法人化にももちろんデメリットがあります。例えば先出の譲渡税が発生することもそうですし、会社を立ち上げた途端に事務作業(提出書類)が増えたり、法人の立ち上げ自体にもお金と労力がかかります。また個人事業主の場合、赤字であれば支払いの必要がなかった所得税も、法人の場合は赤字でも最低7万円の法人税がかかります。

ですので、法人化にあたっては現実の数字に基づいてしっかりと試算を行う必要があります。安易に法人化して手間と費用だけかかっても、逆に税金が増えてしまったというのでは目も当てられません。法人化するか否かは、しっかりとした試算に基づいて、慎重な判断が必要になりますので、詳しく知りたい方はお気軽にお問い合わせください。専門の税理士さんもご紹介しますのでお気軽に。