2017年9月号(1)用途は様々!民事信託活用法

【用途は様々!民事信託活用法】

今回は民事信託(家族信託)を使った様々な活用方法をご紹介します。特に事業承継での 活用方法は現在会社を経営されてるオーナーさんは必見ですよ。

まずは信託のおさらいです。信託の登場人物は右図のように、資産の運用をお願いする  【委託者】。委託者から財産を預かって運用管理する【受託者】。受託者が運用して出た利益を 受け取る【受益者】の三者です。

右上図ではこの三者のうち、委託者と受益者が同じ人になる信託契約を結んでいますので、お母さんが預けた財産を息子さんが運用し、その利益をお母さんに渡す。という形になっています。これで万が一お母さんが認知症などになってしまっても資産運用は息子さんがしてくれるので安心ですね。さらに、お母さんが亡くなった場合はその受益権(受益者の地位)が誰に渡るのか、そこまで指定することもできます。このような形を基本として、信託では様々な場面に応じて臨機応変に活用することで出来ます。例えば信託活用法の例には次のようなものがあります。

再婚や国際結婚、同性婚など

⇒再婚など相続人への配慮が必要なケースでもお互いに複雑な相続が発生しない仕組みを作れたり、婚姻関係が結べずともお互いに生涯サポートし合う関係を信託契約の中で実現できます。

共有不動産対策

⇒複数の委託者から一人の受託者が信託を受けることで名義の集約ができます。共有者全員での手続きが不要なり、受託者が1人でも売買契約などの手続きを行えます。

信託 図 キリトリ

認知症対策

⇒元気なうちに信託契約を結んでおけば、その後、成年後見制度を利用したとしても財産が後見人の管理下に置かれることはありません。(共有者の 1人が認知症になった場合でも信託しておけば受託者1人で様々な手続きができます。)

家督承継

⇒先祖伝来の土地や家業を後世に残すため、遺言では実現できない、孫やひ孫の代までの相続(受益者)を指定することができます。

事業承継にも有効!?

次に会社向け活用方法です。事業承継でもやり方は色々ありますが今回は、先ほどの振り返りの事例に合わせて現経営者を【委託者】兼 【受益者】、後継者を【受託者】とし、信託財産を現経営者の保有する自社株式とします。

自社株式は受託者である後継者の名義となり、経営権は後継者に移動するということになりますが、委託者と受益者が同一人物の信託(自益信託)ですので、財産権は現経営者のままです。つまり配当など自社株式から生じる  収益は現経営者が引き続き享受します。これは個人所有の不動産でも同じですが、受益者課税の原則から、所有権や株の移転はあっても、利益を得ているのが委託者のため、受託者(後継者)への贈与税はかかってきません。

まだワシの目の黒いうちは!

配当だけ受け取りたい場合はこの信託を組めばOKですが、実際に経営を全て任せるのは心配だな。という場合は議決権行使の指図権というものが設定できます。この指図権とは指図権者(ここでは現経営者)が受託者に対して  議決権をどのように行使するかを指図できる権利です。

通常議決権の行使は経営者の自主的判断に任せますが、後継者が会社経営を 誤った方向に進めようとするような場合には、現経営者が指図権を行使して 後継者の暴走を食い止めることができるようにしておくわけです。

この様に、信託では一つの契約の中に場面に応じた様々な要素がちりばめられます。もっと単純に言えば、100%株主の会社経営者が突然認知症や事故で判断能力が無くなってしまった場合、その会社は一体どうなるのか?そんな問題まで解決できる可能性を秘めています。

他人ごとではないかもしれませんよ。

2025年には65歳以上の5人に一人が認知症の社会が来ると言われています。個人にしても会社にしても共通して言えることは、何か起こってから実行するのでは遅いということ。今ご自身に何かあっても大丈夫でしょうか?一度ご自分の状況に当てはめてシミュレーションしてみられてください。信託はその心配をなくす事前対策のうちの一つです。

【次回、認知症の事例に絞った信託の活用方法もご紹介します。】

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