2017年5月号(1)限られた人の『相続後の売却』お得な制度!

該当する方は少ないのですが、こんな方が身近におられませんか?

平成25年8月31日から平成26年12月31日までに相続によって土地や建物を取得。②その相続税を支払った。③さらには将来相続した不動産を売却しようと考えてる方。そんな方に、今回のお話は朗報です!税金減額のタイムサービスが受けられます。でもかなり少ない方を対象にしたお話です。もし該当しなければ…今回は読み飛ばしてくださって結構(笑)。但し、もし該当しそうな方がおられるのであれば、是非、教えてあげてください!

【はじめに】

この制度を理解する前に、まずは不動産を売却した場合の税金のお話です。

相続人の居住用不動産でない場合、売却により利益が発生すれば、それに対して所得税が課税されます(不動産譲渡税)。

〈不動産譲渡税の計算式〉

1.売却金額-(取得費+譲渡費用)=譲渡所得

なお購入時の契約書等が存在せず取得費を証明できない場合、売却価格の5%が取得費とみなされます。ですから譲渡費用(仲介手数料や測量費用など)が0円なら、95%に対して課税されます。

2.譲渡所得に対して、被相続人からの所有期間5年超であれば約21%の税率で課税。

【二重課税は許してやろう(お上の言葉)!】

相続により相続税が発生し、今度は売却により譲渡税がかかってしまう。

だから一定の要件のもと、相続により取得した不動産を売却した場合、この譲渡所得税を軽減する特例が設けられてます。これが今回ご紹介するお得な『相続税の取得費加算』です。この制度では、一定の相続税額を取得費に加算できます。取得費が増えれば譲渡所得は減ります(【はじめに】参照)。

即ち『相続税の取得費加算』とは不動産譲渡税の軽減制度なのです。

また現行の相続税法では、亡くなってから10カ月以内に相続の申告手続をしなければなりません。この特例は3年間という猶予がありますので、被相続人が亡くなってから3年10カ月以内にその相続財産を売却すると、納めた相続税の全部または一部を、取得費に加算できるのです。

なお冒頭の平成25年8月31日~という要件は、あくまで今年の6月30日までに売却する場合です。そして平成26年12月31日に相続したのであれば、平成30年10月31日までが、このタイムサービスを受けられる期間です。

【こんな法人活用があるなんて】

また今は売らないけど将来的には…という方なら、とりあえず同族会社に売却しておくのも手です。株主が息子や孫なら、この売却で相続対策にもなりますよね。

もしくはこの際、法人を設立してもいいかも。いずれにしても売却益から支払った相続税が控除され、併せてこの法人が将来売却する際にも、取得費は今回の売買価格となります。従ってその時の譲渡益も抑えられます。

トドメを刺すなら設立した法人の相続財産の購入資金は相続したご本人様が融資すれば、わざわざ金融機関に借入しなくてもいいのかも(笑)。

【具体的には…】

ここでどれほどタイムサービスがお得か下の図で見ていきましょう。相続人は土地A・B・Cを相続しました。それぞれの相続税額(a・b・c)が500万円ずつとします。相続人はAのみを売却。実はこの制度、平成27年1月1日に改正されていますが、現行法では土地Aに対応する500万円しか取得費に加算できません。

ところが改正前であれば、土地Aのみ売却の場合でも他に相続した土地B・Cに対応する相続税額も取得費に加算できたのです。つまりa・b・cの合計1500万円が加算されます。

このように取得費に加算される額が異なることがおわかり頂けると思います。該当する方は是非ご相談ください!!

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