2017年6月号(2)相続手続きが楽になる!?

今回は、今年5月下旬から開始される【相続手続きの簡素化】を紹介させて頂きます。どうか、最後までお付き合いください!

 

どう変わるの?

結論からいうと、書類準備の手間が大幅に削減される、といった制度になります。

例えば、遺言がない場合は「相続人が被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本等を準備し、その書類を法務局や金融機関、保険会社等の窓口にそれぞれ提出しなければなりません。

しかし新しい制度では、まず相続人の1人が全員分の氏名、続柄、生年月日などを記した【一覧図】を作成します。

それから、被相続人と相続人全員の戸籍を一組だけ揃えて、法務局に提出します。そして法務局は、その内容を確認して【証明書】を作り、相続人には証明書の写しが公布されます。

この【写し】をその他の様々な相続手続きで利用できる、といった制度です。

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なぜ、このような制度が?

実は、相続人が土地や建物を相続しても、その手続きが面倒、という理由で相続登記をせず、被相続人名義のまま放置しているパターンが増え、空家問題、遊休土地の放置といった問題が増えています。

例えば、宮城県や岩手県は、東日本大震災の影響を受けた宅地を、自治体が買取る事業を行っています。しかし、相続人と連絡がとれない等の理由で、買取りが進んでいない土地が、全体の17%にも及ぶそうです。

そして、自治体ではそうした相続登記がされていない土地等について、相続人の調査は行っているもののうまくいかず、そのまま年数が過ぎ、ねずみ算的に法定相続人が増えていき、収拾がつかなくなっています。そして、いざ国が新しく道路を作るため、土地を買収しようとしても、土地の権利が複雑になり買収ができず、道路や公共施設が作れない事例も増えています。

この元凶が、不動産登記の面倒な仕組みです。

しかも不動産登記は任意で、登記後に所有者が引越しをした場合でも、住所変更は必要ありません。それに登記費用もかかります。

更にそんな事情からか、市町村としては「固定資産税を納めてくれれば問題ない」となり、被相続人名義のままで、その税金の支払者名が違うケースも多々あるのです。

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相続の手続き簡素化がスタートすることで

先述したように、簡素化とは言ったものの、実際には最初だけ戸籍謄本等の書類すべてを集めないといけません。しかし、万が一後から書類が必要になる事態が発生したとき、再取得する手間については、もはや気にする必要がなくなります。

結果としてこの制度で楽になるのは、金融機関等の手続きを受ける側だと思われます。現在、各金融機関は相続による名義変更の際、預かった書類等を大量にコピーしていたので、これが証明書1通で済むとなれば、彼らにとっては大幅な事務作業の削減にはなります。

この手続きの簡素化は、叶う事なら相続人や金融機関等の負担軽減を図るとともに、相続登記を促して所有者不明の不動産を解消することも狙いのひとつです。

それだけ土地や建物を相続しても登記等の手続きをされていない方が多いのが現状なのです。更に法務省は、この仕組みが相続手続きだけでなく、相続税や車の名義変更にも活用できるとみて、財務省や国土交通省等、各省庁に新制度の証明書の活用を検討するように依頼しているそうです。

最後になりますが、簡素化とは言うものの、まだまだ相続登記を推進する決め手となるには、解決する課題が多々あるように感じます。今回の制度を足掛かりにして多方面で活用できるようになれば「いつかは私達にとって、本当に便利な仕組みが出来上がるのでは?」とこの制度に期待するところです。