2017年8月号(1)エアコン故障で家賃減額!?民法改正の注意点

120年ぶりの民法改正。賃貸契約に関する3つの注意点

平成29年5月26日に民法改正法案が国会で成立しました。公布日の平成29年6月2日から3年を超えない日で施行となっていますので、まだ猶予はありそうです。が、のんびりしている訳にはいけません。そこで!賃貸に関わる事について調べてみました。主な項目は3つあります。

1、連帯保証人の保証債務に上限を設定

2、敷金は返還が義務化。原状回復はガイドラインが法制化

3、設備故障時、修理期間中の家賃減額が義務化

 

1について

これまでは連帯保証人は債務額に上限はありませんでした。例えば300万円でも500万円でも支払い能力の有無は別として、請求は可能でした。しかし今回の改正で、契約時に“極度額は300万円まで”等と明記が必要になります。今の契約では債務額は、いわゆる“青天井”なので冷静に考えれば連帯保証人は今よりも安心できる“はず”です。しかし、「その金額までは支払い義務が生じる」との事なので、逆に金額が明記される事で不安を助長し、連帯保証人になりたがらない方も増える事が予想されます。

実務上契約時は保証会社を絡めているので、滞納分についてはほぼ心配はありません。ただ連帯保証人になりたがらない方が増える可能性を考えると、①『保証会社との保証契約とは別に、原状回復や精神的瑕疵等の債務の極度額は●●万円まで』と明記する。②連帯保証人を取らない 等の対策と、今以上に丁寧な説明が必要になりそうです。

2について

こちらについては、現状に法律が追い付いた印象です。国交省のガイドラインは現時点では法律ではありませんが、実務上はガイドラインに則って原状回復交渉を行っています。

ただし注意点があります。“賃借人による修繕権”です。「賃貸人が修繕の必要性を知ったにも関わらず相当の期間内に必要な修繕をしない時、あるいは急迫の事情がある場合には、賃借人が自ら修繕できる」となりました。

今後、「必要に迫られて工事をしました。なので●●円を払って下さい。だって、法律がそうなっているでしょ!」と賃借人から請求される可能性が予想されます。“相当の期間内”や、“工事内容・金額”等は明記されていないので、対策としては“迅速な判断と対応”が今以上に求められそうです。

3について

ここも慎重な対応が必要です。今は、「借りた部屋の一部が滅失またはその他の事由で使えなくなった時、その部分割合に応じて賃料は“当然に減額される”」となっていて、実際に減額する場合は賃借人から賃料の減額を請求する事が出来るとなっています。これが、賃料減額の請求をしなくても、当然に賃料が減額されるとなります。しかし具体的にどの程度の減額が適正なのか等は、判例などの“目安”を基準にするしかないようです。

例えば、「エアコンが壊れたので、暑くて(寒くて)部屋に居られない」

「給湯器が壊れてお風呂に入れないし、食事も作れない。」等のケースでは、賃借人から請求がなくても減額が必要となります。そんなバカな!(怒)と言うのが私の率直な気持ちです。しかし・・・対応は不可欠です。

 

今後について

対策が必要な2や3について、「そこまで過敏になる必要はない」という意見やその逆の意見もあったり等、今は意見が様々に入り乱れています。ただし実務を執り行う管理会社は“身構えている”印象を受けました。もちろん、我々も、です(^^;)

今は法案が成立したばかりで情報もまだまだ不足していますし、主な注意点は上述の3つと考えていますが、他にも出てくるかも知れません。ですので、「じゃあ、こんな場合はどうなるの?」などの疑問は山積みで、一つずつ対応と解決をしていかないといけません。

我々も今後、情報収集をし確認をしつつ、随時お知らせをしていきます。