2021年9月号(2)某アパートメーカーの対応は如何に?特定転貸事業者の責務とは

【特定転貸業者とは】
特定賃貸借契約によって賃借した住宅を第三者に転貸する事業を営む者。
特定転貸事業者は、特定賃貸借契約の締結をしようとする場合に、
契約の相手方(賃貸住宅の所有者)に対して誇大に広告する行為及び
家賃の減額リスクなど相手方の判断に影響を及ぼす事項について
故意に事実を告げずまたは不実を告げる行為が禁止されるほか、
契約の締結前に家賃、契約期間等(重要事項)を記載した書面を
交付して説明しなければならない。

上記は、2020 年6 月に制定された賃貸住宅管理業法で定められた義務で、
その対象となる事業者は「D東建託」「Lパレス」「S水不動産」などが
もっとも有名な事業者となります。法令施工後、各社対応に回っており、
皆様の中にも、何らかの書面を取り交わした方がおられるのではないでしょうか。
今回はそれらの事業者の中でも、
当社への相談件数が最も多かった某アパートメーカー(以下某メーカー)について、
実際の所有オーナーさんへの対応事例や当社の視点からの情報発信をしたいと思います。

【突然の減額請求】
「今後末永く共存共栄を図る見地から、現賃貸借契約に定める一括借上賃料を“適正賃料”に改定させていただきたい」
突然こんな文章が届いたオーナー様からご相談がありました。
減額しないといけないのでしょうか?
答えはNOです。
借り手の一方的な希望のみで下げることはできません。
そこで「もっと詳しい内容や下がる金額の根拠や理由の説明を受けられた方がいい」と
アドバイスした数日後、なんと今度は内容証明が届いたとのこと。
中身は「借地借家法第32 条1 項では借賃が不相当になった場合は将来に向って賃料の
増減請求ができる。貴殿が合理的な根拠なく合意を拒むことは契約上の義務違反である。
ついては貴殿に支払う賃料を○○○円とし、別途重要事項説明書を送ります。」というもの。
確かに、契約には著しく賃料が不相応になった場合に互いに増減の請求が出来るという文言があります。
しかし、これはあくまでもお互いの合意に基づく変更であり、先方のいう適正賃料とは、
とある不動産カンテイ会社の出してきた“相場賃料”とされたものが、その根拠となっていました。
そこで目にした提示賃料に驚愕。
その相場は間違いなく依頼者の意向を反映した低額なものでした。

【だったら当社が代理人になりますよ!】
そこで当社は考えました。某メーカーのような大企業に比べ、
明らかに情報弱者であるオーナー様に代わり、我々がその代理人として表に立てば、
さすがに某メーカーもめちゃくちゃなことは言えないだろう。
この地域にこんな会社があると分かれば、
結果としてたくさんのオーナー様の助けになるかもしれない!と。
そこで、我々に出来る地域貢献の一環として無償で某メーカーとの折衝を行う役目をお受けしたのです。
受任したのは、マスターリース契約(一括借上契約)に付随する一切の情報の請求と折衝の代理。
委任状も某メーカーに送り、これ以上オーナーに執拗な値下げを迫る行為をやめてもらうようにお願いしました。
これでオーナー様も熟慮時間とその判断のための資料を集めることができて安心出来る!と思った矢先、
先方から返って来た返答は「非弁行為に該当するので応じられません」でした。

【弁護士法違反!?非弁行為!?】
弁護士法72 条には【弁護士でない者は“報酬を得る目的”で法律事件に関して
鑑定,代理,仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱うことができない】 とあり、
これを行うことは「非弁行為」という法律違反行為に該当します。
某メーカーにとっては我々が入ってきては困るのでしょう。
圧倒的な情報力と専門知識を、アパートを建築させた所有者(消費者であり顧客)に対して振りかざすばかりか、
無報酬で正常な判断をサポートしようとする当社を非弁行為という一言で排除。
その後当社の質問には返答なしです。
仕方がないので、現時点では所有者様から某メーカー宛に内容証明を送り、
値下げの根拠と金額についてのお尋ねをしているところです。

今回の某メーカーのやり方、不動産業者の我々から見えた“良くない点”として
①値下げの根拠となる近隣事例、参考資料が家賃の安いものばかり集めてきて、
「査定」ではなく「相場」とされている。
②一方某メーカーが市場において募集している賃料は、オーナーに公表していない。
そのつもりもない。しかし転貸事業者の収益とするには、これらの差額幅が大きすぎる。

「○○年一括借り上げ」という聞こえの良い言葉の中には
この様な疑問点やリスクが一緒に入っているのです。
だからこそ昨年の法改正によりこれらの説明が
特定転貸事業者に義務付けられたのですが、
どうやら今のところ、既存オーナーに対しては法改正に対応する
最低限度を形だけ満たすことを目的として、
有無を言わさず書類の締結を迫っているようです。
もちろん、すべての転貸事業者がそうではありません。
しかし今回のこのメーカーのやり方を見る限り、
賠償や調査に莫大な費用がかかったその補填を既存顧客から
吸い上げようとしているように見えます。

同じことでお悩みの方がおられましたらお声がけください。