2021年12月号(1)高齢単身世帯の残置物処理

入居者様の年齢・親族関係等により、様々な入居後の問題が起こってくるのが賃貸物件です。
ご存知の通り、現在日本では単身世帯数及び高齢者がいる世帯数が増加中です。
5年毎の総務省の住宅・土地統計調査(2018年)によると、
日本全国の借家の全戸数の1906万5千戸のうち、
65歳以上の高齢者かつ単身世帯は213万7千世帯(約11.2%)を占め、
その世帯数はなお増加中です。
ここで懸念されることの1つが、
「契約者が亡くなった場合、残置物はどうするのか?」という問題です。
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通常の賃貸借契約では、賃借人側に連帯保証人を立ててもらい契約します。
そして、契約者が亡くなった場合は、
まず連帯保証人若しくは相続人等の親族に連絡し、
残置物撤去を含む今後の退去手続きについて話をすることになります。
ですから契約者が死亡してから概ね1か月以内には残置物撤去を終えて頂き、
改装・次の入居者を募集、という流れになっていきます。
以前、弊社の管理物件で契約者が入院中に亡くなり、
連帯保証人もその当時施設に入所中で、
退去手続きができない、という案件がありました。
その時は相続人にあたらない間柄にも関わらず、何とか親戚の方と、
連絡・了承をとることができました。
具体的には、相続人がいなかった事もあり、
残置物撤去については費用を出して頂く代わりに、
弊社が撤去業者を手配することになりました。

このようにうまくいった場合もありますが、
全く相続人・身寄りの方がいない場合はどうするのか?
実際、現状の制度だと、オーナーが勝手に残置物を処分することはできません。
家庭裁判所に相続財産管理人の選任の申立てをし、
弁護士等に相続財産管理人になってもらい、
代わりに残された相続財産の処理をしてもらいます。
ただし、この制度は面倒な手続きと時間
(最低でも約10か月間。改正により、6カ月間に短縮予定)
及び費用(月額1~5万円程度)を要します。
まずは①家庭裁判所は相続財産管理人を選任した時は選任公告をします。
そして②2か月の間に相続人が現れない場合、相続財産の債権者・受遺者を確認するため、
2か月以上の期間を定めて公告をします。
それから③その公告後に相続財産管理人の申立てにより、
相続人を探すため6か月以上の期間を定めて公告をし、
上述の期間満了までに相続人が現れなければ、
相続人がいないことが確定し、
財産について所定の手続きを踏んで処理します。

●残置物の処理等に関するモデル契約条項
本年6月、国土交通省と法務省により策定されたのが「残置物の処理等に関するモデル契約条項」です。
これは60歳以上の単身高齢者かつ個人の連帯保証人がいない賃借人が死亡した場合に問題となる、
残置物の円滑な処理を可能とし、単身高齢者の入居を促進する目的で策定されたものです。
その概要は、賃貸借契約締結前に、賃借人が委任者となり、
オーナーではない第三者を受任者として、
賃借人の死亡時の①賃貸借契約の解除②残置物の処理に関する死後事務委任契約を締結するものです。
受任者は、賃借人の死亡時に代理人として賃貸借契約の解除の手続きを行い、
賃借人に生前指定された残置物を指定された送付先に送ります。
そしてそれ以外の残置物については、
相続人が現れなければ賃借人の死亡から3か月が経過し、
かつ本賃貸借契約が終了した時に受任者が廃棄・換価等します。
委任事務処理に要した費用は、賃借人の相続人に対し請求することができます。
実務上、賃借人が死亡した後には部屋の明渡しを速やかにして頂く必要があるため、
3か月を待たずに非指定残置物を一度他の場所に移して保管する必要があり、
その立会いの必要及び残置物の移動・保管の手間と費用がかかること、
相続人がいない場合の費用求償の取り決め・保証等が必要であること等、
実際の運用に向け課題があると思われます。
今後の動向に注目です。