現在、私たちが直面しているのは、急激な環境変化です。止まらない「建築費の高騰」、収益を圧迫する「金利上昇」の足音、そして避けられない「人口減少」。これに加え、保有物件の「老朽化」が進む中で、単なるリフォームだけでは競合物件に太刀打ちできない厳しい現実があります。
これまでのような「建物を建てて、ただ貸すだけ」という受動的な経営モデルは、今まさに大きな曲がり角を迎えています。コストが上がり、需要が減りゆくという、かつてない逆境の中で、いかにして大切な資産を守り、収益を維持し続けていくべきか。今、私たちに求められているのは、従来の不動産の枠組みにとらわれない、新たな経営のあり方を徹底的に「研究・検討」していくことにあります。
- なぜ私たちが宿泊業を行っているのか?
では、具体的にどのような「研究・検討」が必要なのか。そのヒントは、私たちが行っている「AO太宰府」や、これからオープン予定の「HATAGO太宰府」の宿泊施設の運営と、観光というアクティビティを組み合わせることにあります。
わかり易い具体例として、市場の変化が最先端の福岡市中心部の動向にあります。現在、中央区や博多区でも建設費が高騰、もはや従来の賃貸マンション経営では収支が取れない状況にあります。「えっ?でも建ってるところもあるじゃない?」と思われるかもしれませんが、それは賃料収入を当て込んだ建築ではなく、単なる相続対策に振り切った発想、もしくは…そうです、ホテルなどの宿泊施設として稼働を目論んでいる物件なのです。その証拠に中洲や春吉界隈の築古賃貸は、軒並み入居者の立ち退きを行い、今では「簡易宿所」や「民泊」として稼働されています。
しかしながら、この様に建築費高騰により、より高利回りな宿泊施設としての稼働を余儀なくされた場合でも、今度は宿泊施設の競合物件増加等により、単なる建物のデザインや最新設備などのハードでの競争は、差別化もしづらく、やはり宿泊費での価格競争に巻き込まれるリスクがあります。そこで宿泊施設の管理運営は勿論、これらに付随する飲食や体験、そして地元人脈を駆使したアクティビティを含め、ソフト面での差別化を付加できる、最終兵器として、この「観光」を紐付けしたいのです。
- “大宰府”の力を活かそう!
では、その「ソフト面での差別化」をどう形にしていくのか。幸いなことに私たちの商圏である、この大宰府エリアには、利便性だけでなく、他にはない「自然・歴史・文化」という、極めて恵まれた資源が豊富に存在します。これからの不動産経営において、この圧倒的な地域資源を活かさない手はありません。
こうした資源を具体的な「体験」や「アクティビティ」へと昇華させ、物件の付加価値に変えていく。そのための具体的な実践の一つとして、現在、私(経理部・松尾)と情報部の久保山は「大宰府アカデミー・令和編」(本誌2024年5月号掲載)を経て、さらに専門的な「史跡解説員養成講座」に挑んでいます。2025年3月に同アカデミーを修了し、現在は解説員を目指して頑張っております。
私たちが歴史を学ぶ最大の目的は、単なる知識の習得だけではありません。地域の物語を自らの言葉で紡ぐ「ストーリーテラー」としての素養を身につけ、地域資源を活かした独自のソフト価値をオーナー様の資産に付加することにあります。
例えば、皆さんご存じの旅行ガイドブック「るるぶ」が定義したのは「見る・食べる・遊ぶ」だったのですが、現在は「体験する・交流する・学ぶ」という「新るるぶ」に変化してきています。私たちが「史跡解説員」としての知見を深めているのは、この「新るるぶ」を具現化し、独自のソフトを提供するための準備に他なりません。
また、「歴史」という共通言語を通じて地域社会に深く根ざし、市民の方々と信頼を共創できる「人間」へと成長することも不可欠です。地域活動により主体的に関わり、この街になくてはならない存在として、信頼を積み重ねること。この地道な歩みこそが、建物というハードの枠を超え、オーナー様の資産を次世代へと繋いでいくための、私たちの貯金という位置づけなのです。

講座風景(戒壇院にて)
- 結び
こうした取り組みは、一見不動産業を逸脱しているように見えるかもしれません。しかし、童話『アリとキリギリス』のアリが冬に備えたように、激変する経営環境という「冬」を前に、今どれだけの価値を蓄えられるかが資産の明暗を分けます。
…と、私には似合わない硬いお話となりましたが、実は私自身、根っからの「歴史」好き。史跡巡りの講義は嬉しくてたまらず、大宰府がどんどん好きになっていくのを実感しています!自分の「好き」という情熱を地道な「学び」に変え、それがオーナー様の「実益」に繋がることが、何よりの喜びであり理想なのです。「ただ貸すだけ」という不労所得の時代が終わりを告げようとする今、街の資源を価値に変え、オーナー様の物件の高稼働・高利回りを実現する力を蓄えてまいります。今後ひょっとすると、史跡解説員として宿泊者を引率している私を見かけられるかもしれません。お役に立てる事を楽しみにしております。

経理部・松尾(左)
解説実習(坂本八幡宮にて)

情報部・久保山(左)
解説実習(坂本八幡宮にて)



