2026年02月号(1) 相続対策に影響大!? 令和8年税制改正に迫る!

昨年12月26日、政府から「令和8年度税制改正の大綱」が発表されました。「税制改正」と聞くと、どこか遠い世界の難しい話に聞こえるかもしれませんが、今回の中身は、皆様にも影響が及ぶ可能性が高い改正内容となっていますので、その中でも特に“資産運用”や、“相続対策”に関する2つの改正点に絞ってご紹介させていただきます。

相続開始前“5年ルール”の新設        

これまで、不動産を活用した相続対策の王道は、「時価(購入価格)」と「相続税評価額(路線価)」の差を利用することにありました。つまり、1億円で購入した物件であっても、税務上の評価はそのおよそ半分ほどになるため、その価格と評価の差(乖離)が相続税対策になっていたのです。よく言われる「借金が相続税対策になる」というのは実は間違いで、借金をした1億円が不動産に変わることで相続税対策になっているのです。右図参照

そして、今回の改正で導入される“5年ルール”は、この「現金が不動産に変わること」で得られていた節税の仕組みにメスが入れられる内容なのです。このルールでは、2027年1月1日以降に発生する贈与、または相続から適用され、それ以降は、贈与または相続前の“5年以内”に、購入した投資用賃貸物件や、土地を買って建てた賃貸物件については、原則として「時価の80%」という、実勢価格に近い基準で評価されることになります。つまり、「相続が近くなったから、慌てて不動産を買って資産を圧縮する」という対策は、今後、その効果を十分に発揮できなくなる可能性があるということです。

この新ルールの対象となる物件(5年以内取得の貸付用不動産)については、これまで当然に適用されていた「貸家建付地(約2割減)」や「貸家(3割減)」といった評価減も、重複しては認められなくなるだろうという厳しい見解も出ています。なお、自宅を建替える場合は、5年ルールの適応対象外となります。

小口化不動産は完全時価           

一方で、さらに厳しい制限がかけられたのが「不動産小口化商品(任意組合型)」です。建物一棟を買うよりもずっと容易に、少額から投資物件を所有(共有)でき、現物不動産と同じ節税メリットが受けられる商品ということで人気の節税商品でしたが、今回の改正では、この小口化商品について、取得時期が5年以内かどうかに関わらず、一律で「時価(通常の取引価額)」で評価される方針が示されました。現物不動産のように「8割評価」という猶予すら認められず、事実上、この節税対策は終焉を迎えることになってしまいます。

2026年は「贈与」のラストチャンス!?    

改正が適用される2027年を前に、2026年は「低い評価額で資産を移転できる貴重な1年」となります。特に、5年以内に購入した、評価額と実勢価格の乖離が大きい物件の場合、今年中に贈与を完了させれば、現行の評価ルールを適用できます。ここで鍵となるのが「相続時精算課税制度」の活用です。通常の贈与で発生する贈与税を、相続時まで繰り延べできるので贈与しやくなるという点と、相続時に精算される評価額は「贈与時の評価額」になるため、これから起こる増税ルールから「隔離」できるメリットもあります。また、この制度を使った後の贈与は亡くなる前7年間の「持ち戻し」対象外となります。

5年ルールに縛られない対策があります!    

もう1つ、重要な「例外」も示されました。それは、「既に5年以上所有している土地」に新たに賃貸物件を建てるケースです。この場合、5年ルールの縛りを受けず、建物完成と同時に従来通りの“現金が不動産に変わることで得られる節税効果”と、アパート・マンションであれば、“借地権、借家権の評価”による節税効果を享受できます。もし未活用の遊休地や、駐車場として使用されている土地をお持ちであれば、規制が強化される前に建築プランを検討してみることも、資産を守るための重要なプロセスと言えるかもしれません。

失敗しないための注意点

こうした改正内容が公表されると、往々にしてそれを回避するための施策や市場が過熱してきます。しかし!その策や市場に安易に乗っかってしまうと、後々困ることになりかねませんので、以下のような事には注意が必要です!

★【アパート建てませんか営業の激化】

「今なら間に合います!」という言葉で、採算の合わない物件を建ててしまうことは、対策として本末転倒です。節税効果よりも、将来の空室リスクや返済に追われる「負動産」にならないよう冷徹な経営判断が求められます。

【租税回避による罰則規定】

「今贈与すれば評価を下げられる」という安易な考えで、短期間での取得・贈与は、税務署から「租税回避」つまり、不自然な資産移転による“課税逃れ行為”とみなされ、後々になって時価評価を突きつけられるリスクがあります。

【特別受益による親族間トラブル】

税務上の持ち戻しは「贈与時の時価」ですが、民法上の特別受益は「相続時の時価」で計算されます。物件価格が上昇する可能性がある場合は、他の相続人から「不公平だ」と訴えられる可能性があることへのケアまで必要です。

大切に守ってこられた資産を、できるだけ良い形で次世代へ繋ぐため、まずは「我が家の場合はどうなるか」というシミュレーションをしてみませんか?今からできる“円満相続”への施策を一緒に考えましょう☆