2022年1月号(2)暦年課税贈与が使えなくなる!?今こそ考える相続税対策

●暦年課税贈与制度とは
暦年課税(れきねんかぜい)とは、
毎年1月1日から12月31日の1年間で譲り受けた財産の合計金額から、
基礎控除額である110万円を差し引いた残額に贈与税を課すという贈与税の課税方式です。
わかりやすく言うと「年間110万円以下の贈与であれば贈与税はかからない」というものです。
この制度の計算を利用した贈与のことを一般的には「暦年課税贈与」と言います。
この暦年課税贈与、最近ちらほらと“制度がなくなりそう”といううわさが流れていますが真相はいかに?

●課税制度改正の動向
個人間の贈与に対する課税制度には、
①暦年課税贈与②相続時精算課税贈与という2つの方法があります。
①暦年課税贈与は、それぞれの年ごとに税の精算をするため、
贈与した金額は1年毎に相続財産から切り離されていくようなイメージです。
これに対し②相続時精算課税贈与生前贈与分を相続時に取り込み合算して相続税を計算するもので、
贈与時には一定の範囲まで税がかからないものの、
相続時にその精算をしなければならず、相続財産から完全に切り離すことはできません。
また、相続時精算課税制度は受贈者ごとにその制度の利用を選択できるのですが、
一度選択するとその受贈者への贈与は暦年課税贈与に戻すことが出来ません。
このように2つの課税制度を見比べてみると、
相続財産を切り離す(減らす)という側面では暦年課税贈与が優れていると言えます。
ところが!
この暦年課税贈与を利用して富裕層が相続税の負担を回避していることが問題視されており、
ここにメスが入りそうなのです。
ちなみにこの話題は以前から言われており、何も令和3年度に始まったものではありません。
令和2年度の税制改正大綱にも似たような記述があります。
ただ、いずれにしても見直しが検討されているということです。

●今こそ暦年課税贈与を活用しよう!
生前贈与を行って財産を切り離し、
相続財産を減少させることが出来るのが暦年課税贈与です。
見直しが検討されいているとはいえ、
現時点ではお手軽に利用することが出来る制度、
毎年行うことが出来ますので複数人を対象に、かつ何年間も続ければ、
その効果は雪だるま式に増えていくことでしょう。
そして、暦年課税贈与を利用するのであれば、
あとで税務署から疑義を持たれないように贈与の事実をしっかりと残しておくことがポイントです。
金銭であれば贈与先へ振り込みを行って、その贈与があった事実を残しましょう。
当然ですが、贈与を受ければそれは受けた人のお金です。
その通帳は贈与を受けた人が自分で管理しないといけません。
たまに贈与をした人が通帳を持ったまま管理していることがありますが、
それでは税務署から贈与の事実自体に疑いをもたれてしまいます。
またできれば贈与契約書を作成しておくのが後々のトラブル回避にもつながりますし、
あえて110万円を超える金額を贈与し、
贈与税を支払っておくというのも疑義を持たれないための手段として有効です。
また、相続税は、累進課税制度を採用しており、
相続財産が多ければ多いほど適用される税率が高くなります。
例えば、相続税に適用される税率が40%の人がいるとします。
相続税を減らしたい場合はこの40%よりも低い贈与税率になるように暦年課税贈与を利用すればいいのです。
相続税の試算を行って、適用される税率をしっかりと予想した上で暦年贈与を行う。
これが賢い活用術です。

●今からでも遅くない
さてさて、暦年課税贈与が改正されるとしてもそれは数年先かもしれません。
また、マイナンバーの普及も道半ばである現実を考えると、
改正内容は生前贈与の合算年数を延長させる程度ではないでしょうか
(現在は相続開始前3年以内の贈与は相続財産に持ち戻して計算)。
詳細はその時になってみなければ分かりませんが、
今メリットがある方は暦年課税贈与を利用して損があることはありません。
まだ利用されていない方は考えるいいきっかけでしょう。
巷では暦年課税贈与がなくなりますよ!という情報から新しいビジネス
(贈与後の使い道や、保険商品への切り替え提案など)も活気づいているようですので見極めも必要です。
いずれにしても暦年課税贈与の肝は「いつ終わるか分からない」ことです。