2022年9月号(1)「要らない不動産」にお悩みではありませんか?

かつての土地神話時代は、どの土地も値上がりするはずの財産。
それが今や値下がりを通り越し、持っているだけで維持管理費のかかる「負動産」に…。
そんな話も耳にする時代になりました。
しかし「こんな土地いらない…」と思っても土地所有者は放棄できません。
唯一、相続時であればこの土地を放棄することが可能ですが、
それでも従来の放棄では、特定の土地だけ放棄することは出来ず、
プラスの財産もマイナスの財産も全て放棄しないといけません。
しかも、放棄してもその不動産が国庫に帰属するまでは管理義務が残り、
プラスの財産も放棄したのにどうやって管理すればいいの?と途方に暮れて、
ついおっくうになりそのあげくに放置、それが所有者不明土地の始まりです。
※現在日本には九州全土と同じくらいの面積の所有者不明土地が存在します。


●“相続土地国庫帰属制度”が始まります
そんな所有者不明土地の発生を抑制する目的で、
2023年4月から【相続土地国庫帰属制度】が始まります。
この制度ではなんと!相続財産である不動産から、
「この土地は欲しいから相続します、
でもこの土地は要らないから国が引き取ってください」という選択ができるというもの。
価値ある不動産は手元に残し、持っててもマイナスな「負動産」だけ国に。
従来なら考えられなかったそんな都合の良い制度ができるのです。

●どんな土地でも引き取ってくれるの?
とはいえ国も、なんでもかんでも引き取るわけではありません。
引き取りの要件として、次にあげる土地は対象外となります。
①建物がある土地
②担保権または収益目的の権利が設定されている土地
③通路その他で他人の使用が予定されている土地
④土壌汚染土地
⑤境界等に争いがある土地
⑥崖地
⑦管理処分を阻害する工作物樹木等がある土地
⑧除去しなければ管理処分が出来ない有体物が地下にある土地
⑨隣地所有者と争訟によらなければ管理処分できない土地
⑩管理処分に費用や労力がかかる土地つまり、他人の権利が入っていなく、
 工作物もなく、争いもない、完璧な更地でない
と引き取ってくれません。

●審査手数料と10年間分の管理費が必要
次に、手続きの流れは下記図のようになります。

金額はまだ未定ですが、国への金銭支払いも必要になります。
まずは申請時の審査手数料、次に土地の性質に応じた標準的な
管理費用を高所して算出した10年分の土地管理費用相当額
(今のところ原野で約20万円、市街地の宅地で約80万程度)を
納付する必要があり、その金額を納付しないと引き取ってくれません。

●それでもやっぱり、放棄より国庫帰属の方が
なんだ、結局お金を払わないといけないのか、
それならやっぱり放棄した方がいいんじゃないの?と
思われる方がおられるかもしれませんが、
相続放棄をした場合は先述のとおり価値ある財産まで放棄しなければなりません。
また実は放棄をしたとしても、それで解決するわけではなく、
例えば配偶者と第1順位の相続人(お子様)が放棄をされた場合、
その財産は全て第2順位の父母や祖父母が相続することになります。
そしてさらに父母や祖父母が放棄した場合は、
第3順位の兄弟や甥姪にまで相続が移る為、
結果相続人となり得る全員が放棄の手続きをしなければなりません。
第1順位の方の放棄が原因で、兄弟や甥姪にまでそんな迷惑かけられませんよね。
ここまででもなかなか大変なのに、
さらにここから財産を国庫に帰属させるための「相続財産管理人」の申請が必要になります。
しかもこの手続きは最後に放棄をした相続人が行わなければならず、
そのための予納金として100万円程度準備が必要になる場合も。
そういった意味でも放棄手続きを要せず
「お金を払えば負動産の悩みから解放される」画期的な制度といえるでしょう。
2023年4月27日からの申請開始です。