2024年3月号(2)将来への備え!成年後見と家族信託!

皆様もご存知の通り、2025年に団塊世代が75歳以上になることで、超高齢化社会が迫っています。
その為、最近では「後見制度や家族信託で備えをしておきましょう。」のような話を耳にするようになりました。
とは言うものの「そもそも後見制度や家族信託って、どんな制度?」
そのように思っている方も多いのではないでしょうか?
そこで今回は【法定後見制度】【任意後見制度】【家族信託】について簡単に説明させていただきます。
制度を利用する人の家族関係・判断能力・資産状況等で、
どれを選択すれば良いのか。判断の一助になれば幸いです。

●成年後見制度について
現行の成年後見制度は平成11年の民法改正により、
それまでの「禁治産、準禁治産制度」が廃止され施行されました。
精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害等)により判断能力が
著しく不十分な方を保護・支援する為の制度です。
障害の程度に応じて「補助」「保佐」「後見」の3つの類型があります。
(「補助」は軽度、「保佐」は中度、「後見」は重度というイメージです)。
そして成年後見制度には【法定後見制度】と【任意後見制度】があります。

【法定後見制度】
法定後見には先述したように「後見」「保佐」「補助」の3種類があります。
いずれも本人の財産管理等、法律的なサポートを目的としています。
そして、判断能力の程度により家庭裁判所へ後見開始の申立てを行います。
それから家庭裁判所によって選任された成年後見人等(補助人・保佐人・成年後見人)が本人の利益を考え、
本人を代理して契約等の法律行為をしたり、本人自身が法律行為をするときに同意を与えたり、
同意を得ずに行った不利益な法律行為を後から
取り消したりすることで本人を保護・支援します(日用品の購入等、取り消しができない行為もあります)。
また「保佐」「後見」の申立てには本人の状態を医学的に確認する為、医師による鑑定が必要です。
鑑定料は個々の事案によって異なりますが、ほとんどの場合10万円以下となっています。
なお、後見人の決定は本人の財産や親族の状況を勘案し、最終的には家庭裁判所の裁量で決まります。
つまり、親族を成年後見人とする申立てをしても、その通りに選任されるとは限りません。
実際のところ7割程は司法書士や弁護士等、親族以外の職業後見人が就いているのが実態です。
更に家庭裁判所が必要と認めるときは後見人が行う事務を監督する後見監督人が選任される事もあります。
上記の事から法定後見制度は、すでに本人に精神上の障害が発生している場合に利用されます。

【任意後見制度】
任意後見は、本人が元気な内に予め自分の判断能力低下に備え代理人(任意後見人)となる者と
公正証書で任意後見契約を締結しておき、自分の生活や療養看護、
財産管理に関する事務について代理権を付与しておく制度です。
本人の判断能力が低下した時、
一般的には任意後見人が家庭裁判所へ任意後見監督人の選任を申立てる事により開始されます。
以後、任意後見人は任意後見監督人の下、契約で決めた事務について適切な保護・支援を行います。
先述した法定後見制度と比較すると手間が削減され、
また任意後見人に親族を指定することで費用削減の効果が期待できる制度です。

【家族信託】
先述した後見制度は、あくまで判断能力が不足した本人の生活を守る為の制度です。
その為、資産対策について本人はもちろん、親族でも希望通りにできません。
必ず家庭裁判所の許可が必要になります。
そこで、その問題を解決できる制度が下記に紹介する民事信託というものです。
まず民事信託とは委任者(財産の所有者)が自分の財産を受託者(財産を管理・処分する人)に託し、
その財産の管理処分を受益者(財産から生ずる利益を受ける人)の為に行う法律関係のことを言います。
例えば、親(委託者)子(受託者)に自宅や賃貸アパートの管理・預貯金等、
特定の財産の管理処分権を託し、子がその財産の管理を親(受益者)の為に行う。
これが【家族信託】と呼ばれるものです。

上記の例の場合で、親が認知症になったとしても信託契約を締結しておけば、
子が賃貸アパートの賃貸借契約の締結、大規模修繕工事、そして売却等を行う事ができます。
※後見制度では、もし親が充分な現金を持っており売却の必要がないと判断されると、
家庭裁判所の許可を得るのが難しいです。

このように、家族信託を利用する場合には不動産等の資産があり、かつ信頼できる後継人が必要です。