2024年3月号(1)ご存じですか?最近の業界動向?

今回は私たち不動産業界をとりまく周辺事情や動向について触れていきたいと思います。
ご存じの方も多いかと思いますが、
不動産業界も他の業界動向で先行きが大きく左右される業界です。
最近の分かりやすい事例で言えば、
熊本県菊陽町にTSMCという半導体メーカーの工場が誘致されました。
それにともない、周辺では住宅や商業施設を建てるための土地需要が高まり土地価格が高騰、
場所によっては、建物が建てられない土地(市街化調整区域)なのに、
1坪40万円以上で取引されている事例もあるようです。
二日市駅徒歩五分圏内の住宅地で、1坪50万円前後ですから、
この取引価格を考えると菊陽町の土地所有者さんはうらやましいですよね…。
ただ、このような不動産への影響はその一面にすぎず、実は他にも影響があるのです。

●消えた出店プロジェクト…
多くの方がご存じのことと思いますが、今年2024年11月、
小郡市に大型ショッピングセンター「コストコ」がオープンします。
全国にファンがいるコストコが出来るということは、
これから周辺は多くの人の流れが見込まれるでしょう。
でも実はその陰で、とある地場企業の極秘プロジェクトが着工目前で中止となってしまいました。
その企業が苦渋の決断をされた原因は2つ、1つは物価上昇による建築費の高騰です。
そしてもう1つは人財採用の問題でした。
建築資材の高騰については2020年末を基準とした比較で2023年には約1.5倍
鉄筋コンクリート造で言えば2020年80万円/坪だった価格が今年120万円/坪まで上がり
当初の計画予算では建築そのものが実現不可能となっています。

そしてもう1つの問題は、開店エリアが“コストコ”と同じということ。
「えっ?人の流れができて、いいのでは?」と思われると思いますが、
問題はアルバイトなどの人材確保です。
コストコ 時給」と検索すると分かりますが、実はこのコストコ、
今の日本で一番高い時給を出す企業で、その額は実に!
“全国一律1500円”。
900円台のアルバイト代で人材確保をしていた企業にとって、
近隣に1500円もの高額時給を出す店があっては人材確保がままならず、
その分こちらの時給を上げようとすると運営計画が狂ってしまいます。
さらにコストコが脅威なのは、この時給1500円が全国一律というところ、
実はこれは非常に厄介な問題で、
田舎に行けば行くほど“稼げない地方”から“稼げる都会”に移るストロー現象のように、
近隣の小さな商店や小売店から、良い人材が吸い上げられ、
結果、廃業に追い込まれる地場企業や付随して家賃が支払えなくなる人が
増える原因の1つにもなっているのです。
大企業がやってくるということは、
自治体やそこで事業をしている私たち地元民、
不動産オーナーにとって、いいことばかりというわけではないのです。

●視点を変えれば勝機アリ!!
なんだか心配な気持ちになってしまいますが、視点を変えればそこに勝機も見いだせます!
例えば建築費の高騰については、今から建築されるマンションやアパートの建築費は、
どうやっても避けようのない現実で、その分家賃を上げないと絶対に収支が合いません。
でもそんなチャレンジができるオーナーも、高額家賃物件に住める人も、
今の世の中にどれほどいるでしょうか?
実際、福岡市内中心部では、居住用の賃貸物件では採算が合わないため、
アパート・マンションの建築から、ホテルを建築、これを運営会社に任せる等の動きに、
シフトチェンジも進んでいるようです。
そういう意味では、すでに賃貸物件をお持ちの皆様は、競争優位にいると言えます。
ある程度のお金をかけて、既存物件の魅力を活かしたリノベーションなら、検討の余地ありです!

ホテル運営と言えば、昨年末に「旅館業法」が改正されたこともまた勝機に繋がる可能性があります。
今回の改正では、宿泊事業者がその事業や不動産を第三者に譲渡したならば
“営業許可”自体を引き継ぐことが可能となりました。
今まではM&A等の会社株式の買収という、ある意味リスクを負って行っていたことが、
不動産や事業譲渡でも引き継げるとなれば、旅館、ホテルの取引が活発になり、
今までよりも価値が上がると思われます。
この様に、一見関係無い業界動向でも、影響を受ける事例はまだまだあります。
今後も皆様に有益な情報が提供できるよう、
様々な業界動向に注視し、見極めていけるよう努力してまいります。