西暦600年代の日本は、氏族制度から律令制へと変わる、まさに時代の転換期であり、外国からの強い圧力も受けていました。このような背景から、特別史跡である「水城」や「大野城」「基肄城」が、多くの地元民たちによって造られたであろうことは、この地で生きる人々の精神性にも、少なからず影響を与えたと思われます。それは、次なる時代を見出そうとする、コロナ禍で苦しむ現代の我々にも、相通じるのではないでしょうか。
今回の座談会では、太宰府天満宮の西高辻信宏宮司と九州大学大学院の施光恒教授に、「和魂環才」をテーマに語り合っていただきました。歴史から学べる知恵や、私たち日本人がこれから意識するべき思考・行動などについて、一緒に考えてみませんか?


今後の日本人は
どう生きるべきでしょうか?
西高辻氏 地域とか地方の色がなくなってきたと思っています。人口が増大する中で、雇用を含めて需要を満たすために、各地域が同じようになってきたという問題があります。都市部に集中し、地方もまた都市部に似てきたということが、各地方などに引き継がれてきた良さというものを、少しずつ薄めてしまったのだろうと思っているところです。
今は転換期で、これまでは都市部でしができなかった仕事が、テクノロジーの進展によって、自分のライフスタイルを踏まえて適した場所に住んで仕事ができるようになりました。フラットな目で見て住む場所を選べますし、歴史や過去を振り返っていいものを探すこともできます。
(中略)日本の良いところを身につけた上で、未来に向けた取り組みや生き方ができることが、これからの日本にとって大切だと思います。
施氏 己を知って何を受け継いで何をしてゆくか、もう一度確認するところから始めたいと思います。
日本の伝統文化の中には優れた物がたくさんある。我々はそれを半ば無意識に受け継いでいるのです。それをよく知った上で、どうやって我々が現在の世の中で一番力を発揮できるような、一人一人を伸ばせるような仕組みをつくっていくか。そういうところを発想する必要があるのではないかと思います。
例えば政治の面では、憲法改正の議論がよくされるようになりました。私も自分たちの憲法は自分たちの手でつくった方が良いと思っていますが、今の改憲の議論で欠けていると思うのは、9条の話など細かい点ばかり話している。憲法をつくるときに、じゃあそれは日本の伝統文化からどう出てきたものなのか、その議論がないのです。
憲法はやはり国家の枠組みだと思うんですね。国の枠組みを作っていく場合は、日本人が古来から大切にしてきた価値を、どう国家の根本に据えるか。そこの議論をしないといけないと思います。
※対談から一部抜粋