今回は賃貸経営とは関係ないですが、不動産に関わることについて触れていきたいと思います。突然ですが”用途地域“という言葉をご存知ですか?すでにご存知の方もいるとは思いますが、不動産の購入や売却、建物の建築はもちろん、賃貸物件を選ぶ際など、日々の生活に深く関わっています。いったいどういうものなのか、ご説明いたします。
用途地域とは都市計画法に基づいて、地域により建物の種類や用途、規模などが定められた地域です。大きく分けて①住居系地域 ②商業系地域 ③工業系地域の3つの地域に分けられています。さらに用途に応じておおよそ10を超える地域に細分化されており、住みやすい環境を整え、効率的な土地利用を行い、災害のリスクを軽減するといった目的があります。
①住居系地域
おおよそ10を超える地域の内、8つの地域を占めています。まず、第一種・第二種低層住居専用地域は快適な住環境が整っている地域。第一種・第二種中高層住居専用地域は中高層の建物がゆるされている地域。第一種・第二種住居地域・準住居地域は商業と住居が混在している地域です。テナント系も目立ちます。
②商業系地域
商業系地域には2つの地域があります。主に商業地を中心とした街並みにするための地域です。繁華街として発展させたい地域のため、駅周辺などの商業施設などがあります。飲み屋、オフィス等が混在する反面、住居系はあまり見かけません。
③工業系地域
工業系地域には3つの地域があります。主に工場の利便性を考えた地域です。病院等は建築出来ません。
用途地域の違いによる影響は?
たとえ隣接していても、土地の価格が違うことがあります。もちろん土地の形や日当たりなどにより価格差が出ますが、実は価格に大きな影響を与えるのは、意外にもこの用途地域だったりします。
用途地域によって価格差が生じる主な理由は「建物の建て方、使い方の違い」これにともなう「周辺環境の違い」や「将来性」です。
「建物の建て方、使い方の違い」
各用途地域では、建てられる建物の種類や高さ、敷地面積などが制限されています。例えば、商業地域では高層ビルや高層マンション、商業施設や工場を建てることができます。しかし、第一種低層住居専用地域では戸建て住宅のみ、という場合が多いです。
「周辺環境の違い」
用途地域によって周辺環境も変わってきます。商業地域は賑やかで交通の便が良い駅周辺である一方、第一種低層住居専用地域は静かな住宅地で緑が多い特徴があります。
「将来性」
将来的にその地域がどのように開発されるかによって、土地の価格に違いが出てきます。商業地域や第二種中高層住居専用地域は駅の近くで高層マンションなど大きな建物を建てることが出来るので、土地の価格が高くなる傾向があります。
その一方、第一種低層住居専用地域は静かな住宅地で、基本的に戸建て住宅しか建てることができないため、土地の価格は比較的に低くなる傾向があります。
【賃貸でも】
賃貸でお部屋を探す際にも用途地域が関係してきます。しっかりと用途地域を確認していないと、入居後に隣地に工場が建設され騒音・振動に悩まされるといったことが起こるかもしれません。事務所や店舗として借りる際も用途地域によっては使用できない場合もあるので、我々不動産業者も責任を持って事前に説明する必要があります。賃貸の場合は、立地や周辺環境、賃料などを優先してしまい、住宅購入時と違い、土地の利用制限に関することへの注意をおろそかにしがちです。用途地域を事前に確認することで、将来起こるリスクを把握し、未然にトラブルを防ぐこともできます。
【そのための重要事項の調査】
用途地域は自治体のホームページで公開されていますし、市役所にて確認することができます。一度見てみると面白いかもしれません。しかし、大半の方が結局は「何が大切なのかが、分からない!」のではないでしょうか?そのために重要事項の説明があります!
宅建業法の第35条では最低限の決められた事項を相手方に説明する義務を明示。その中には用途地域も当然あります。更に第35条以外にも購入・貸借の意思決定に重要な要因にも調査・説明をする必要が我々(宅建業者)にはあります(第47条)。秘かに我々が最も恐れている、条文なのです。
この為に『ヒアリング』があると言っても過言ではありません。仲介手数料を節約するために個人間で売買をすることも可能ですが、安心・安全な取引をするために宅建業者へお願いする重要な価値がここにあります!