社会全体で注目される「カスハラ」問題、不動産業界にも波及
近年、カスタマーハラスメント、いわゆる「カスハラ」への関心が高まっています。厚生労働省が2022年にガイドラインを公表し、東京都も2025年4月に条例として明文化する等、対策は社会全体の課題となりつつあります。
ニュースでも「店員に土下座を要求した」などの事例が報じられ、他人事では済まされない時代となっています。
賃貸管理の現場でも、入居者からの理不尽なクレームや要求、暴言が増加しています。深夜の緊急対応を強要されたり、「SNSで拡散する」と脅されるケースも少なくありません。高額な初期費用(敷金・礼金・仲介手数料など)を支払うため、入居者の期待が過剰になりやすく「完璧な設備・対応が当然」と考える方もいます。そのため、入居後のわずかな不備にも過敏に反応し、過剰な要求へと発展することがあります。
例えば「入居前にはすべての壁紙を新品に」「床は一切傷なし」「キッチンは新品のように」といった“新築並みの完璧さ”を当然と考える方は一定数おり、担当者は根気強く説明し、誠実に向き合う必要に迫られます。また、不動産契約には多くの専門用語や法的要素が含まれるため、内容を正しく
理解できないことがトラブルにつながり、それが怒りに変わってカスハラになることもあります。
こうした対応は現場のスタッフに大きな時間的・精神的負担をかけ、業務効率や生産性を著しく低下させます。対応に追われて本来の業務が遅れ、残業やミスが重なることで、さらに疲弊してしまうという悪循環も起きがちです。
その影響は担当者だけにとどまりません。職場全体のストレス要因となり、チーム全体の士気やサービス品質に悪影響を与えます。最終的には退職者の増加や人材不足。補充人員の経験不足からの対応力の低下といった事態にも発展し、最終的にはオーナー様の物件運営に支障をきたす可能性も否定できません。
毅然とした対応で、管理会社の矜持を示す
従来は「気合で乗り切る」「塩対応で押し切る」といった方法が通用したかもしれませんが、現在はSNSでの“切り取り拡散”リスクが高く、対応一つで企業イメージが損なわれる時代です。こちらの不手際に対しては低姿勢な対応が必要ですが、度を超えた要求には毅然と対応し、管理会社としての矜持を示すことも重要です。
いずれの場合も、誠実な対応を貫くには専門的知識と高度な判断力が求められます。そのためには、時間と労力をスタッフに充分にかけ、突っ込んだ法的見解や研究、そしてコミュニケーションを極めるような研修機会を設け、スタッフが是々非々でお客様と向き合える質の高い管理サービスの提供に努めなければなりません。されど「言うは易し」。
実現には企業としての本気の覚悟と継続的な支援体制が欠かせません。
カスハラ対策はオーナー様のメリットに直結!
このような取り組みはオーナー様にとっても大きなメリットをもたらします。スタッフが安心して働ける環境を整えることで、入居者様への対応品質が安定し、結果としてクレームやトラブルが減少。これにより入居率向上や解約時のいわれなき出費などの抑制、満室経営の維持にもつながります。
社内や業界全体でカスハラへの理解を深め、対応方針を明確化し、スタッフを守る体制づくりが不可欠です。必要に応じて法的措置も視野に入れながら、誠実かつ毅然とした姿勢で対応してまいります。入居者の要望に耳を傾ける姿勢を忘れず、同時にオーナー様の理解を得ながらスタッフの体制強化に取り組むことが、資産価値維持・向上に直結する時代です。今後も、よりよい住環境の提供と安定した賃貸経営の実現に向け試行錯誤を続けてまいります。



